「老後のために、そろそろ何か始めなきゃ」、「まわりのみんなもNISAやiDeCo(イデコ)をやっているみたいだし、出遅れたくないな」
子育てがない分、自分のセカンドライフをしっかりと見据えたい私たちにとって、老後資金の準備は切実なテーマですよね。特に、現在は夫の扶養の範囲内の収入で暮らしている方にとって、将来への備えは人一倍気になるものではないでしょうか。
しかし、良かれと思って「iDeCo」の口座を開き、毎月コツコツと積み立てを始めたものの、後から「こんなはずじゃなかった……」「失敗した!」となってしまう勘違いがあるので、始める前に確認してみましょう。
「夫の税金」は1円も安くならない
iDeCoの最大の武器は、何と言っても「毎月の掛金が全額、所得控除になる(税金が安くなる)」という点にあります。テレビやネットでも、この節税メリットが大々的にアピールされていますよね。
ここで多くの方が、「私がiDeCoをやれば、稼ぎ頭である夫の所得税や住民税が安くなるのよね?」と誤解してしまいます。
しかし、ここに大きな落とし穴があります。iDeCoの所得控除は、あくまで「掛金を支払っている本人」の税金にしか使えません。
夫の口座や、夫の収入から妻のiDeCoを拠出していたとしても、妻自身が扶養内で所得税や住民税を納めていない(あるいは極めて低い)状態であれば、戻ってくる税金はそもそも存在しないのです。
「せっかく家計をやりくりして拠出しているのに、我が家の税金は1円も安くなっていない……」
万が一この事実を後から知ったら、リカバリーする方法はただひとつ。自分の年収を上げることだけです。
「60歳まで引き出せない」という資金拘束の罠
税金が安くならないだけで、お金が貯まるならいいのでは? と思われるかもしれません。ですが、iDeCoには「原則60歳(拠出期間により最大65歳)まで、途中で絶対に引き出すことができない」という強力なルールがあります。
アラフィフ世代のこれからの10年、15年は、人生の転換期です。
夫の退職、自身の健康状態の変化、あるいは親の介護など、予期せぬ理由で「まとまった現金」が必要になるシーンが訪れるかもしれません。
そんなとき、あなたの口座に眠っているiDeCoの資産は、目の前にあるのに使うことができないお金なのです。「あの時、普通に貯金しておけばよかった」と後悔しても、一度入れたお金は60歳を過ぎるまでロックされたまま…。
節税メリットという恩恵を受けられないまま、資金が縛られるリスクだけを背負う形になってしまう。これこそが「失敗」です。
口座を維持するだけでお金が減っていく現実
この記事でもお話ししましたが、iDeCoは金融機関の「口座管理手数料」が無料であっても、制度の番人である「国民年金基金連合会」や信託銀行への維持費が毎月必ず発生します。
毎月コツコツ積み立てるだけでも、あるいは途中で拠出を止めて「運用だけ」の指図者になったとしても、あなたの資産からは毎月一定の手数料が引かれ続けます。
現役でバリバリ働いていて税金が何万円も安くなっている人なら、この手数料は微々たるコストです。しかし、節税メリットがゼロの場合には、「ただ口座を維持するためだけに、自分のお金が目減りしていく」という、非常にシビアな現実となって跳ね返ってきます。
扶養内のあなたへ、FPが提案する「本当の選択肢」
ここまで読んで、「じゃあ、私は老後の準備をしちゃいけないの?」と不安にさせてしまったらごめんなさい。決してそんなことはありません。
もしあなたが扶養の範囲内で、自分たちの老後資金を心地よく育てていきたいのであれば、iDeCoよりも「NISA(ニーサ)」を最優先に選ぶべきです。
- いつでも引き出せる安心感:万が一、人生の文脈が変わって急にお金が必要になっても、NISAならいつでも売却して現金化できます。
- 無駄な手数料がかからない:ネット証券などを選べば、口座を維持するための手数料は一切かかりません。
- 運用益はしっかり非課税:iDeCoと同様に、増えた利益に対する約20%の税金はかかりません。
iDeCoとNISA、それぞれの人にそれぞれの生活があるように、どちらをどう選択するのかは人それぞれ。大切なのは、あなたの今の立ち位置(扶養内or所得税多)と、これからの人生のバランスです。
「我が家の場合は、どちらの乗り物(制度)に乗るのが正解かしら?」と迷ったときは、ずっと一人で悩み込まずに、まずは現在の家計の現在地をパートナーと一緒に見つめ直してみてください。その一歩が、20年後のあなたを心から笑顔にする羅針盤になります。
今日の啄木の短歌はこちら
事ごとに合点(がてん)ゆかざる心地して 終日(ひねもす)もの思ふ日にまたあるかな物事のすべてがどうも腑に落ちない、納得がいかない。そんなモヤモヤとした気持ちを抱えたまま、一日中考え込んでしまう――。
「老後のため」と一生懸命に選んだ選択が、なぜか自分の暮らしとしっくり噛み合わず、合点のいかない心地になっている……。なんてことになりませんように。
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